発売中のカフェインレスコーヒー(デカフェコーヒー)カフェイン除去方法について
2016
06/27
現在も発売中のカフェインレス(デカフェ)コーヒーのカフェイン除去方法についてお問い合わせがいくつかあり ましたのでまとめます。
今回のカフェインレスコーヒーは皆さんからもカフェインレスとは思えないおいしさ、とのお言葉を何件もいただいて大変うれしく思っております。カフェインレスとしては類を見ない良い出来栄と思っております。
●まず原材料が高品質の物を使っています。(コーヒーに限らずどんな食材でも物が良くなければおいしくなりません)クオリティの高いコロンビアのナリーニョ県ブエサコ市の生豆をカフェインレス加工しました。
輸送:産地(コロンビア)⇒加工地(ドイツ)⇒日本、全てリーファーコンテナ(温度を一定に調整するコンテナ)にて移動
精製:発酵槽を使用した伝統的ウォッシュト
品種:カスティージョ、カトゥーラ、コロンビア、ティピカ等
【生産者情報】
生産者:ブエサコの農家
所在:コロンビア ナリーニョ県ブエサコ市
【カフェイン除去加工】
超臨界CO2という手法による除去
co2を超臨界流体状態という液体と気体の特性を兼ね備えた状態にした物でカフェインを除去する方法です。高い除去率を持ち、優れた脱カフェイン方法となります。
【今回の生豆のカフェイン含有率】
処理前含有率:1.360%
処理後含有率:0.023%
除去率:97%以上となっております。
以上です。
以下は更に細かな詳細です。もっと詳しく知りたい方はご覧ください。長文です。
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<超臨界CO2によるカフェイン除去について>
■まず『超臨界』とはどのような状態でしょうか。
少し聞きなれない言葉かもしれませんがご説明いたします。
物質の状態には個体、液体、気体の三相があります。
これに高い圧力と温度をかけて臨界点(気体と液体の密度が等しくなった状態)をさらに超える事によって液体と気体でもなく両方の特性を持つ状態となります。(つまり2つの相が区別できなくなった状態です)
(なおここでは亜臨界についての説明は割愛します)
超臨界のCO2は液体と気体の両方の特性を持っています。
すなわち物質を融解しやすい液体的の特性と拡散性の気体の特性です。
また超臨界のCO2はカフェインに対しての親和性が高く融解しやすいです。
さらにCO2には毒性や引火性が無い為このような作業に向いているともいえます。
他にもCO2は比較的臨界温度が低い事、また化合物としての安定性があるという作業上のメリットもあります。
(臨界温度の低さは装置の簡素化だけでなく生豆への熱の影響をなるべく抑える事も出来ます)
■手順
1.前処理として生豆にスチームをあて膨張させる(超臨界CO2に曝露しやすいように)つまり生豆の体積を膨張させ超臨界CO2を生豆内部に浸透しやすくするための処理です。
2.CO2の温度、圧力をコントロールしカフェインを融解しやすい条件の超臨界流体状態にする。生豆にはカフェイン以外の成分もありますがカフェインの融解温度・圧力を狙い、これのみを融解させます。
3.超臨界流体状態のCO2を前処理した生豆に加えカフェインを特異的に融解させる。
4.カフェインを融解させた超臨界CO2を回収する。
5.スチームにより上昇した生豆の水分値を元に戻すため乾燥処理を行い処理完了。
■特徴
1.原材料となる生豆以外の物質はスチームに使用する水と二酸化炭素だけ。
有機溶媒などは使用しません。
水と二酸化炭素しか使用しない”安心”な方法とも言えます。
2.カフェイン除去率97%程度を達成しており、ウォータープロセスと同等かそれ以上の除去精度。(ウォータープロセスは今回商品とは別の除去方法の事です。参考までにこれについては後で記述します)
3.カフェインを融解させた超臨界CO2は、温度・圧力を下げ気体に戻すことで容易にカフェインと分離するため回収し施設内で再利用できます。
加えて、純度の高いカフェインも容易に回収できる。
高純度カフェインは医薬品やエナジードリンクといった需要があり販売できるため、処理自体のコストダウンに繋がるメリットとなります。
(これは医薬品にも使える純度のカフェインが抽出できる優れた方式ともいえます)
結果、カフェインレスとしては高い精度でカフェインが除去されかつ類を見ない良質で香味のコーヒーができあがりました。
どうぞこの機会に『美味しいカフェインレスコーヒー』をお試しください。
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※ウォータープロセス(ここでは有名なスイスウォーター方式の説明となります)とは生豆に含まれる成分のうち、カフェイン以外の水溶性成分の飽和水溶液(GCE:GreenCoffeeExtract)に生豆を漬け浸透圧によりカフェインを抽出する方法です。この飽和水溶液には処理対象の生豆以外から抽出されたもの(つまり『他の生豆』に含まれる由来成分)も使用されています。
この方式ではカフェインより溶けやすい水溶性の物質が目一杯溶け込んだ飽和状態なので他の物質は溶けだせずカフェインが溶けだされます。
ただし一度にはすべて取り出せないので何度も少しづつカフェインを取り出すのを繰り返し水溶液につける工程を繰り返し行います。
※なお余談ですが超臨界の方式はコーヒーのカフェイン除去だけでなく、
お茶のカフェイン除去や他にも殺菌、染色など様々な分野で利用されています。
また異なる作業分野によってはCO2ではなく臨界温度が高いH2Oを超臨界や亜臨界で使用する場合もあります。
以上となります。